Research
3. Trust and Educational Relationships
信頼は社会生活を送るうえでなくてはならないものです。これなくして電車に乗るにも、スーパーで食材を買うにも、また友人と会うことも困難になります。このような日常的にも身近な信頼は、しかし不思議なものです。知っているもの・ことであれば、信頼する必要はありません。合理的に証明できるものは信頼しなくてもかまいません。合理的に完全に証明できず、かつ未来に関わっているものであるため完全に知ることができないがゆえに、私たちははそのもの・ことを信頼すると言えます。それゆえ信頼とは、非合理的であり、狂っています。しかしだからこそ信頼は、理性では届かない領野に足を踏み入れるという意味において、神秘的でもあります。教育関係においても信頼は必須であるとしばしば言われます。しかし合理的世界を超えた信頼は、どのような意味を教育関係ではもつようになるでしょうか。そしてまた、そのような信頼は、どのような人間形成的意味をもつようになるでしょうか。従来価値をもっていた意味が喪失しているこの現代世界において、信頼は、それでも私たちが頼ることのできる手すりをもたらしてくれるのではないかと考えています。